時代遅れの高校生の就活で気がついた、国家生産性を高める提言

「1人1社制」という構造的障害
高校生の就職活動には、10月までは1社、11月以降でも2社までしか応募できないという「一人一社制」という慣行が今も残っている。都道府県ごとの申し合わせであり法律ではないが、生徒の応募機会を事実上縛る力を持つ。この制度に触れた時、日本の労働市場全体が抱える構造的な問題の縮図を見た気がした。
一人一社制は生徒から比較検討の機会を奪い、ミスマッチ就職を助長する。高卒就職者の3年以内離職率が大卒より高い背景には様々な要因があるが、一人一社制によって十分な比較検討ができないことも、その一因となっている可能性は否定できない。一方で大学進学は「デフォルトの進路」となり、学力や適性を十分に問わないまま進学者が増加し続けてきた。その多くが貸与型奨学金という名の借金を背負い、卒業時に300万円を超える負債を抱えて社会に出る。高卒で就職すれば選択肢を制度的に奪われ、大学に進めば負債を背負う。今の若者は、どちらの道を選んでも不利になりやすい構造の中に置かれている。
生産性向上は国家戦略そのもの
この状況を放置すれば、日本の生産性はさらに低下する。初期キャリアの選択の質は、その後の生涯賃金やスキル形成、離職と再就職のしやすさにまで長期的な影響を与えることが知られている。だからこれは教育政策の一分野ではなく、国家の生産性戦略そのものとして扱うべき課題だ。
「入口・途中・出口」の一貫した制度設計
具体策は三段構えで考えたい。まず一人一社制を緩和し、生徒に複数応募と比較検討の機会を取り戻す。次に、大学を「18歳で入る場所」から「必要な時に学び直す場所」へ位置付け直し、社会人向けリカレント教育への公的支援を拡充する。あわせて既卒・第二新卒に特化した専門的な再就職支援を整備し、離職を失敗としてではなく起こりうる前提として制度を設計し直す。入口・途中・出口を一貫したパッケージとして扱わなければ、片方を直しても別のところで詰まる。
国内企業定着へのインセンティブ
そして奨学金制度についても、日本国内で継続的に雇用・納税・研究開発に貢献する企業に就職した場合に返還を一部減免する仕組みを導入すべきだ。これは特定の職業選択を罰する制度ではなく、国内での人材定着を後押しするインセンティブ設計であり、地域枠奨学金など既存の前例を応用すれば実現可能性は高い。財源設計と中小企業への配慮を丁寧に組み込む必要はあるが、方向性としては筋が通る。
「要請」から「構造的介入」へ
企業に初任給の引き上げを要請するだけでは機能しない。個社にとっての合理性(人件費抑制)と、国家にとっての合理性(生産性向上)が一致しない以上、税制や公的支援による直接的な介入がなければ動きは鈍いままだ。要請ベースの施策は、他社が動くまで自社は動かないという合成の誤謬に陥りやすい。
18歳の制度設計が、日本の40年後を決める
高校生の就活という小さな入口にこそ、日本の生産性を左右する構造がそのまま透けて見える。18歳の一度の選択に人生の選択肢が縛られる社会と、失敗や回り道を前提に学び直せる社会とでは、若者が働く姿勢そのものが変わってくる。少子化の時代、一人の若者が生み出す価値はこれまで以上に大きい。18歳の就職制度は教育制度ではない。日本という国家が、限られた人的資本をどう育て、どう活かすかという国家戦略そのものである。高校生の就活改革は、若者支援ではなく、日本の未来への投資として議論されるべきだ。
